グラマラスな衣装を纏ったまま、セットから子どもの学校の保護者会に直行しなければならなくて、たまらなく恥ずかしかったと語るグレタ・リーは、憎めない人だ。現在、ロサンゼルス郊外でスローライフを送っている彼女にとって、オーラ全開で人前に立つよりは、静かな暮らしを満喫する方がどこか性に合っているように思える。だが、ひとたび表舞台に出ると、圧倒的なセンスのルックで周囲の視線を一身に集める。
「ファッションはアイデンティティの探求」
ロエベ(LOEWE)の2024年春夏プレコレクションキャンペーンにも登場したリーは、ファッションをとことん謳歌する。ウェットヘアにボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)のクラッシュベルベットドレスといったルックに、パールが散りばめられたシャネル(CHANEL)のセットアップ。ザ・ロウ(THE ROW)のオーバーサイズスーツにプロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)のメタリックドレスなど、主演映画『Past Lives(原題)』のプロモーションだけでも多種多様なテイストのコーデを、臆せず披露してきた。そんな彼女は「自分らしくいられる、ちょっとだけ型破りで、少しスポーティ」なルックを、スタイリストのダニエル・ゴールドバーグにいつも求めると言う。
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リーの要望をすべて叶えているのが、ロエベのクリエイティブ・ディレクター、ジョナサン・アンダーソンが手がけるアイテムの数々だ。歪んだネックラインや彫刻的なドレスのシルエット、奇抜すぎて逆にファッショナブルに見えるシューズなどに表現されるアンダーソンの生来の遊び心は、一種のストーリーテリングのようで、ファッションを「アイデンティティの探求」と語るリーのスタイル理念と完璧にマッチしている。
挑戦を厭わない姿勢から生まれる、多面的な魅力
LAで育ったリーは、コリアンタウンとビバリーヒルズというふたつの異なるコミュニティにうまく溶け込むために、環境に応じて常に着る服を変えてきた。HBOのドラマシリーズ「ガールズ/ GIRLS」を撮影した2013年頃はミッキーマウスのTシャツ、チューブスカート、コンバース(CONVERSE)が彼女のレッドカーペットルックの定番だったが、「New Girl / ダサかわ女子と三銃士」(2014)や「Broad City(原題)」(2017)などの話題シリーズへ出演し知名度が上がると、イギリス刺繍のトップやダンガリーシャツ、フローラルプリントのドレスや乙女チックなサテンパンプスを履くように。そして、第2子出産後に初めて出席した2019年のエミー賞授賞式では、クリストファー・ジョン・ロジャーズ(CHRISTOPHER JOHN ROGERS)の七色に光るグリーンのクロップドトップとボールガウンスカート姿で登場し、力強く輝かしいオーラを放った。彼女のレッドカーペットルックの変遷を振り返ると、彼女は常に「その時々になりたい自分」に合わせてスタイルを変えていることがわかる。
クールに見せることにこだわらず、あらゆるファッションに挑戦することを厭わない姿勢こそが、リーをカッコよくしているものだ。多くのイット・ガールが、一貫したスタイルを持っていてそこからブレない一方で、彼女はいつも予想の斜め上を行くコーデを披露する。常日頃、メディアで名前があがっているわけではないが、グレタ・リーという多面的な魅力を秘めた俳優は、今後も見る者を楽しませてくれるに違いない。
Text: Alice Newbold Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.CO.UK